改めて「はるか」が持つ役割を考えつつ、減便が与える影響を調査
先日、JR西日本は「はるか」の減便を含む運転計画の変更を発表しました。
この変更により、現30往復から16往復になりました。
ただ、現在の空港の発着状況を鑑みると、空港輸送ではこの程度の減便では本来済まない乗客減が起きているはずです。
これは、減便が発表される直前(4月20日12:27)に私が投稿したものです。
本日の関西空港の発着便数は
— 時刻表から始まる旅 (@traveltimetable) 2020年4月20日
国内線36便、国際線2便の計38便で、
前年同月の発着実績を基にした昨対は国内線26.4%、国際線0.5%、合計6.6%です。
乗客数では6.6%を下回るでしょう。
国内でコロナが早期に終息しても、国際線は当面戻らないと思うので、はるかなどの減便は避けられない気がします。
日によって多少変動はあると思いますが、誤差の範囲だと思われます。
これ程までに、関西空港の利用者は減少しているにも関わらず、なぜ16往復は運転されるのか。
そこで、今回は改めて現行の「はるか」の停車駅や時刻から「はるか」が持つ役割を考えてみます。
見えてきた役割と減便後に運行される列車からJR西日本の考えを推測します。
「はるか」の停車駅
一部停車駅
下り
1,5,7号:高槻
3号:草津、石山、大津、山科、高槻
9,13号:米原、彦根、近江八幡、野洲、守山、草津、石山、大津
上り
38~48,52,56号:高槻
50,54号:高槻、大津、石山、草津、守山、野洲、近江八幡、彦根、米原
主な役割
①空港輸送
当然ながら、メインの役割です。
高槻駅への停車の時間帯は、朝の関西空港行と夕方から夜にかけての関西空港発になります。また、高槻駅への停車がされるようになったダイヤ改正の資料中には、
高槻エリアと関西空港相互間のクセスがより便利になります。(JR西日本ホームページ:平成28年ダイヤ改正について(京阪神エリアについて)(https://www.westjr.co.jp/press/article/items/151218_02_keihanshin.pdf)より引用)
とあり、高槻駅への停車は空港輸送を意識したものと言えます。
②着席通勤需要
琵琶湖線内の各駅や、阪和線内の各駅への停車がこれに該当するかと思います。
ここで、このような疑問を抱いた方もいるのではないでしょうか。
「琵琶湖線内の停車も高槻駅への停車と近い時間帯なので、①に該当するのでは?」
では、次の内容を見てみてください。
2014年のダイヤ改正で、大阪発草津行の「びわこエクスプレス」が増発された時の資料には、
平日の夕通勤時間帯において、現在の大阪駅21時台発の米原行き特急「びわこエクスプレス」号に加え、新たに大阪駅20時台発の草津行きを増発します。これにより、20時・21時台において、新大阪から京都・草津方面へ向かう特急列車が 、特急「はるか」号も合わせると、約30分間隔での運転となります。(JR西日本ホームページ:平成26年ダイヤ改正について(京阪神エリアについて)(https://www.westjr.co.jp/press/article/items/131220_00_kinki.pdf)より引用)
とあり、新大阪から琵琶湖線方面へ向かう特急列車として、「はるか」も混ぜられています。「びわこエクスプレス」は完全な通勤特急ですので、「はるか」の琵琶湖線内停車は通勤特急的な意味合いも強いと思われます。
また、米原発の列車は関西空港着9:13、10:04(平日)であり、少し遅めです。
③観光輸送
京都へのアクセスという側面を持つ列車もあるようです。
上り8,10号は京都10:04、10:34着の列車で、天王寺着は9時台と通勤には遅い列車です。
以前は2駅に停車しなかった便であり、停車が拡大になったダイヤ改正の資料には、
歴史と文化の都市、古都京都へのおでかけに特急「はるか」号をぜひご利用ください。(JR西日本ホームページ:平成25年ダイヤ改正について(近畿統括本部)(https://www.westjr.co.jp/press/article/items/121221_00_kinki.pdf)より引用)
とあり、これらの2駅から京都へ行く際に「はるか」を利用してほしいという思惑が見えます。
また、ちなみに、平日の45,49,53,57号、土休日の45号以降は日根野で快速和歌山行に連絡します。京都から和歌山まで走る「くろしお」は京都17:47発の1本しかないので、それを補完する目的もあるのかもしれません。
減便による影響
前項で分かった役割を踏まえた上で、運休対象の列車を見てみましょう。
そこから、各方面への影響を考えます。
運休列車
下り 5,9,13,17,21,25,29,33,37,41,45,49,53,57号
上り 6,10,14,18,22,26,30,34,38,42,46,50,54,58号
①空港輸送への影響
基本的には、2本に1本間引く形の概ね1時間間隔への変更となっています。
また、始発と最終を残しているため、運転時間帯の縮小を避けた形です。
間隔を間引きながらも、運転時間帯の縮小は避け、1時間間隔に留めるなど、空港輸送の維持に努めている模様です。
②着席通勤需要への影響
琵琶湖線に関しては、米原発着の2往復が両方とも運休になりました。
夜は「びわこエクスプレス」が2本あり、1時間間隔に変更と言えますが、朝は9号よりも40分程度早い時間帯に走る1本のみになったので、朝の方が影響は大きいかと思います。
特に、滋賀県内から京都への通勤で使用していた方には大きな痛手かと思います。
(「びわこエクスプレス」は京都7:01着と京都への通勤にはやや早い)
阪和線に関しては、朝の6号の運休と夜の1時間間隔への変更という形になりました。
元々、6号は天王寺8:40着、新大阪9:07着と少し遅めの到着となる列車でしたので、通勤需要は2,4号に比べると少ないように思われること及び「くろしお」もあることから、阪和線に関しては琵琶湖線に比べると影響は小さいと思います。
③観光需要への影響
ここに関しては、今は配慮する必要がないところかと思います。
平日に関しては、和歌山への快速に連絡する「はるか」は全て運休されていることから、和歌山への連絡はそこまで気にしていないように見えます。
各方面への影響から考えられるJR西日本の考え
やはり、始発と最終を残しつつ、1時間間隔にすることが既定路線だったように思います。
(ちなみに、南海「ラピート」の減便内容は、平日は通勤時間帯以外を集中的に、土休日は10時頃から全て運休と、空港輸送よりも通勤輸送の維持に舵を切っています。)
こうなると、運転本数16往復は決定します。
※15往復にすると、どこかで1時間以上空きます
後は、5,9,13・・号と3,7,11・・号のどちらを運休するかです。
前者だと朝に2本続けて運転する形になりますが、後者だと夜に2本続けて運転する形になります。
そこで、どちらかと言うと運転間隔が揃っていない朝を優先させたのかなと思います。
他にも、
・通勤輸送の優先度は阪和線の方が高かった
・米原発着の運休で走行距離をより抑えたかった
・車両運用の都合
など、色々考えられますが・・
総括ですが、JR西日本としては空港輸送の維持と通勤輸送の維持では、優先度はあまり変わらなかったものと思われます。
要因としては、南海と違って運転区間も長いことから、極端な施策が打ちにくいというのもあるとは思います。
いずれにしても、コロナウイルスが一刻でも早く終息し、元の本数に戻ってほしいと思います。
長くなりましたが、最後までお読みいただき、ありがとうございました。